男着物徹底全解説|初めての男着物入門、必要なアイテムから選び方まで

男性の着物姿を見かけることも増えました。今こそ男着物デビューをしたいと考える人もいることでしょう。

しかし、女性の着物では多いものの、まだまだ男性の着物について情報があまりないと感じている人も多いのではないでしょうか。

この記事ではそのように悩む人に向けて、男着物を始める際に必要なものや着付けについて説明しています。初心者が思いがちな疑問にも答えているので、着物生活の第一歩にぜひ参考にしてください。

男着物、これだけは揃えよう

男着物を始めるにあたってなにが必要なのでしょうか。着るシーンによっても必要なものは変わってきます。ここでは普段着からちょっとしたお出かけに着ることを想定して説明します。

長着と羽織

着物は長着とも呼ばれます。素材は木綿やウール、正絹などがあり、着る季節や素材によって袷(裏地がある着物)か単衣の二種類があります。

寒い時期には洋服でいうジャケットに当たる羽織もあるとよいでしょう。男性の場合、もともと長着とセットになって仕立てられているものも多くあります。

また、着物は通常自宅で洗うことは難しいですが、自分でも洗うことができるポリや東レシルック素材などの着物も販売されています。

一般的な角帯、また柔らかい素材の兵児帯があります。まず一本だけであれば万能な角帯を選ぶとよいでしょう。綿や正絹、また化繊素材など種類は多くありますが、正絹のものが一番滑りにくく締めやすいといわれておりおすすめです。

襦袢・半襟

着物の下に着るもので、着物とほぼ同じ形をしています。襟など肌に触れる部分をカバーして着物が汚れることを防ぎます。長襦袢と半襦袢があります。

長襦袢は後述する肌襦袢と裾除け、もしくはステテコの上に着用します。半襦袢の場合、裾除けもしくはステテコと組み合わせることで長襦袢の代用として使えます。

半襟は襦袢の衿にかける別布のカバーです。襟足の汚れ防止の役目があります。色柄も様々な装飾目的としても使われます。

肌着類と裾除け、ステテコ

肌襦袢は、長襦袢もしくは半襦袢の中に着る肌着です。半襦袢の場合着なくてもかまいません。

裾除けは長着に足が直接触れることを防ぎ、足さばきを良くしてくれます。巻きスカートのような形状が慣れないならステテコでもかまいません。

足袋と履物

足袋は洋服でいうところの靴下です。素材はブロードやべっちんなど季節によってもいくつかあります。また、男性の場合黒か紺の無地が一般的ですが、柄物もあります。

男性用の履物には、大きく分けて草履、下駄、雪駄があります。

下駄は木の台に鼻緒をすげた履物です。現代では桐素材が一般的のようです。白木のままのものと塗りを施したもの、また二枚場や草履の形を模したものなど様々です。

カジュアルに用いられることが多く、正式な場では着用できないこともあります。夏などは素足で履くこともあります。

草履はコルク材などに布や皮などを巻いて整形し、鼻緒をすげたものです。和装一般に用いられ、素材など幅広い種類があります。

必ず足袋を履いて着用する必要があります。

雪駄は草履の一種で、竹皮の草履の裏に皮などを貼って防水し、踵の部分に尻鉄をつけたものです。神社の神職や茶事の際によく用いられています。

腰紐

長襦袢、着物それぞれを着た際に帯の下に結ぶものです。慣れて入れば長着を帯で着ることもできますが、緩みやすくまた着崩れしやすいので準備する方がよいでしょう。

男着物の疑問に答えます

必要なものがわかったところで、どのように選べばいいのかを説明します。

素材と種類

大きくわけて10月~5月に着用する袷と6~9月に着る単衣の二種類があります。

袷は裏地があり、単衣は裏地なしの仕立てが特徴です。正絹や綿、ウールなど素材にはいろいろあり、ウールの場合、袷の時期用であっても単衣仕立てにすることも多くあり、通年着ることができます。袷は羽織とセットで仕立てられるものも多いです。

暑い時期である7、8月は透け感のあるものや浴衣を着ます。

初めて購入するのであれば、正絹の袷やウールの単衣がおすすめです。羽織もセットで購入しておけば、少し改まったシーンでも活用できます。

裄丈、着丈、身幅について

着物のサイズは洋服のサイズとは異なります。男着物の場合、女性のように着付けの際におはしょり(ウェストあたりで折り曲げて丈を合わせる部分)をとらず、対丈という自分の肩から裾までの長さでないと着ることができません。

最低でも、この2つのサイズをあわせるようにしましょう。

裄丈(ゆきたけ)着物の中心線から袖の先端までの長さ

着丈(きたけ)

襟の下のライン(肩のあたり)から裾までの長さ

さらにオーダーで仕立てる場合は、身幅(前幅、後幅、おくみの長さを足したもので体の幅のサイズ)を測ることも必要になります。特に普通より太っている、痩せているなど標準的な体系でない場合は気を付けるとよいでしょう。

オーダーと仕立て上がりの違い

オーダーは自分の身体に合わせて仕立てるオーダーメイドです。先述した通り男性の着物はおはしょりがないためサイズの調整がしにくいため、ジャストサイズの着物は着崩れもしにくく快適に着ることができます。

仕立て上がりはいわゆる既製品の着物を指します。サイズ展開もS・M・L・LLと大まかであるケースが多く、体にぴったり合わないこともあります。しかし購入後すぐに着ることができ、仕立てるよりも費用も時間も抑えられるのもメリットです。

適応身長が指定されていない場合は身長から30cm程度引いた身丈(着丈)サイズを目安に選ぶとよいでしょう。

男性物と女性物の見分け方

ポイントは2つあります。

まず、袖付けの部分を見てみましょう。男性物は袖の付いている部分(脇の部分)が全部縫って閉じられていますが、女性の着物は「身八つ口」といって脇が開いているのが特徴です。

また、女性物の場合、「広衿」といって縫い込まれていない衿が多いですが、男性物の場合「棒衿」といって初めから衿幅を折って縫い込まれています。女性の着物でも「ばち衿」といって同じような形状になっているものもありますが、男性物は背中心から衿先までの幅が全て同じになっているのでわかりやすいでしょう。

男着物を手に入れたら

念願の男着物を手に入れたら、着る前にするべきことがあります。以下で説明します。

仕付け糸は着用前にとる

着物を新しく仕立てたり、もしくは中古でも新古品や洗い張り(着物を一旦解いて洗い再度仕立てたもの)際に、着物にところどころ白い糸が縫い込まれていることがあります。

これは型崩れを防ぐためのものですので、着用前に抜きましょう。ただし乱暴に抜いたりすると生地が傷みます。丁寧にはさみなどで切って抜くようにしましょう。なお、はさみで切る際には着物そのものに傷をつけないように注意が必要です。

なお、「飾りしつけ」といって仕立て方によっては細かい「ぐし縫い」で施されたしつけもあります。この場合は縫い目を押さえるためのものなので取ってはいけません。

襦袢に半襟をつけておく

半襟は襟足の汚れ防止の意味もあるので、必ずつけましょう。塩瀬や縮緬などの正絹、ポリエステルなどの化繊など素材は様々です。夏は絽や麻、同じく夏用の化繊のものを季節にあわせて変えましょう。

なお、慶事の時の黒紋付羽織袴の場合は必ず塩瀬羽二重の白、弔辞の時は鼠色や黒になります。それ以外は自由なので、着物や帯と上手に組み合わせておしゃれに装ってみましょう。

男着物の楽しみ方色々

男着物は女性の着物に比べて楽しみが少ないという印象を持つ人も多いですが、そんなことはありません。華やかさはないものの、隠れたおしゃれを楽しめるポイントはたくさんあります。

帯結びも色々試して

一般的に用いられる結び方は、貝ノ口です。そのほかにも、片ばさみや浪人結び、虚無僧結びなど定番から変わったものまで多くの結び方があります。

女性の帯結びよりも結び方が簡単なケースが多いので、ぜひ色々試してみましょう。時代劇などを見ている際に、出てくるキャストの帯結びなどに注目してみるとさらに面白いでしょう。

 羽織裏や八掛に凝ってみる

男着物の楽しみは、隠れた部分にあります。羽織の裏地に絵を用いたり、袷の裏地でちらりと見える八掛などに鮮やかな色を用いるなどすると一段上の玄人好みのおしゃれが楽しめます。

袴にもチャレンジしてみよう

正式な場での黒紋付袴を連想されるように、袴姿は男着物では一段上の改まった装いになります。日本の芸時においては様々なシーンで袴が用いられており、茶事や弓道や居合などの武道などでも袴の着用が義務付けられていることも多いです。

袴は足さばきもしやすく、野袴というような普段着用のものから略礼装に使えるものまで種類も豊富です。男着物に慣れたら、ぜひ袴にもチャレンジしてみると着用シーンがより広がるでしょう。

まとめ

男性の着物の選び方からサイズ、楽しみ方まで解説しました。日本の伝統的な衣装である着物は今注目され見直されてきています。中古やレンタルも豊富になってきているので、この記事を参考にぜひ男着物デビューを果たしてください。