友禅師 水野可菜さんが中日賞を受賞!第55回中部染色展レポート

中部染色展とは?

染織の世界には、活動の支援のために様々な団体が設立され、その活動の支援が行われています。その団体と新聞社などで運営される公募展は、職人が自分の腕を振るうことができる大切な成長の場です。

中日新聞社と中部染色作家協会で運営される中部染色展もその一つで、今回は55回目、去年はコロナで中止になったので一年振りの開催です。

中部染色作家協会は、昭和40年に結成と歴史があるそうで、コロナ禍で応募数が少なめだったということですが、全44点が名古屋県美術館8Fギャラリーに展示されました。

 

水野可菜さんが中日賞を受賞

今回は、弊社、matou着物でご一緒する水野可菜さんが、上から2番目の賞である中日新聞賞を受賞されました。

 

キラキラとした銀糸が織り込まれた生地に大胆にデザインされた訪問着です。

海神=ワダツミに捧げる花をイメージからデザインの着想を得たそうです。濃紺と銀鼠の地色の2色を水飛沫の白とミントグリーン、独特の墨色が結びます。

特にこの墨色は、中部染色作家協会の会長古田好孝さんからも「真っ黒というのではなく独特の色合いになったのが、大胆でも上品さを維持できたポイントでは?」と見学の際に褒められていました。

作品のファンタジー性を強調するために、花のデザインはあえて写実ではなく、想像上のお花を描いたそうです。

他にはない、水野さんらしい勢いのある作品で、水野さんを染色の世界に導いた元名古屋友禅伝統工芸士(組合を抜けるとどんなに腕が良くとも、伝統工芸士を名乗れなくなります)で染色作家の大野比呂志先生も水野さんに「よく頑張った!来年は、一番上の賞を取るように早くから準備を!」と激奨されていました。

若手を応援する公募展

その他にも、まだキャリアをスタートさせようとし始めたばかりの若手の作品が展示されています。

 

こちらの『Candy Lush』が1番の賞を取った作品で作ったのはまだ美大の学生さんだそうです。

元会長でもある大野比呂志先生は「若手を少しでも応援したい。染色に長く取り組んでくれたら」とこの中部染色展を運営されているお気持ちについて話してくださいました。

バブル崩壊後、なかなか活路を見出せない、着物の手仕事の分野ではありますが、志のある方々がなんとか未来を作ろうと粛々と活動を続けられている、そんな想いに触れることのできる、楽しい企画です。

開催情報

愛知芸術文化センター 8F ギャラリー にて
2021年7月18日(日)16:00~まで開催中